ちょっとヘヴィーな映画が観たいと思っていた時に、ふと目に止まった作品。
北欧の至宝、大好きなマッツ・ミケルセン主演。極寒の地で一つの「生」を守るために、歩み出す決心をした男。その行く末を見てみたくて鑑賞。
一言でいえばサバイバル映画です。が、派手なアクションも怒涛の展開もない、ただだた静かに男の決断と葛藤が描かれる作品です。渋い。
思いっきりネタバレありで、思いつくままに綴ります。
「残された者ー北の極地ー」作品詳細
- 原題：Arctic
- 上映日：2019年11月8日
- 制作国：アイスランド
- 上映時間：97分
- 監督：ジョー・ペナ
- 出演：マッツ・ミケルセン、マリア・テルマ・サルマドッティ
- 配信プラットフォーム：Amazon Prime、Hulu、U-NEXT他
「残された者ー北の極地ー」あらすじ
飛行機事故で北極地帯に不時着したパイロット、オボァガードは、壊れた飛行機をその場しのぎのシェルターにし、白銀に包まれた荒野を毎日歩き回り、魚を釣り、救難信号を出すという自ら定めた日々のルーティーンをこなしながら、救助を待っていた。しかし、ようやく救助に来たヘリコプターは強風のために墜落し、女性パイロットは大怪我を負ってしまう。目の前の確実な「生」を獲得してきた男は、瀕死の女を前に、ついに自らの足で窮地を脱しようと決心する。危険は承知。しかし、行動しなければ女に未来はなく、自身にも明日は来ないかもしれない。現状の安住を捨て、勇気ある一歩を踏み出すが・・・。
出典：Amazon
「残された者ー北の極地ー」感想
主演は、「007/カジノ・ロワイヤル」をはじめ、「ドクター・ストレンジ」「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」などハリウッド系の大作にもバンバン出ているデンマークを代表する俳優マッツ・ミケルセン。今回も圧巻の演技をみせてくれます。
共演に、マリア・テルマ・サルマドッティが名を連ねていますが、ほぼ意識を失っている状態なので、マッツの独壇場といえる作品です。97分ほぼマッツ。最高ですね。
以下、ネタバレ含む感想です。
決心する男
雪の大地を一心不乱に掘る男。掘っていたのはSOSの文字。
男（マッツ）が極寒の地に一人取り残され救助を待っていることがわかります。大破した小型飛行機を拠点に、凍った湖から魚を捕り、遭難信号を送る機器？を回して寝る。そんなルーティンを続ける日々が一気に動き出します。
男を見つけたヘリが救助にやってきたのです。
喜んだのもつかの間、悪天候でそのヘリは墜落。。歓喜から絶望へ。。男の落胆が胸に迫ります。
ヘリの中には、2人の乗組員。1人は死亡。1人はお腹に傷を負っています。ホッチキスのような治療器具で傷口をとめ合わせ、ヘリのドアをソリがわりにして女を飛行機に運び、水を与えてあげる男。
一瞬意識を取り戻した女は、同乗のパイロットの安否を確認した直後、再び意識不明に。
女を飛行機に残し、男はヘリに戻り、荷物をチェックし始めます。家族の写真、ガス湯沸かし、ライター、ちゃんとしたソリを見つけた男は、微笑みます。
ただ惰性のように毎日のルーティンをこなし、生きることに疲れていたかのような男。たとえ意思の疎通が出来ないとしても、人のぬくもりを感じ、久々に温かいご飯を食べたことで、満たされたのが伝わります。
しかし、そんな時間も長くは続かず、徐々に衰弱していく女をみているうちに、男は、見つけた地図を手に、自身に差し迫った命の危険はない飛行機から、一刻の猶予もなさそうな女の助けを求めるために北の観測地に旅立つことを決めます。
ほぼ意識をなくしている女をソリに乗せて。
重傷を負っている女を抱えての旅。正直そのままとどまっていた方が救助の確率は高いのではないかと思ってしまう状況。ヘリが墜落したってことはそのヘリの捜索もあるはずだから。
それでもなお、危険な旅に一歩踏み出す決断をさせたものはなんなんだろう。
長い間、独りで待つことに絶望し、何かを変えなくては思ったのかな。
守らなくてはと思うものができたがゆえに生まれた活力と強さ。それが男を突き動かす原動力になったのかな。
迫り来る脅威
女をソリに乗せ、雪の大地をひたすら歩いて進む男。弱々しくしか手を握り返すこが出来ない女に水や食べ物を与え、ひたすらソリを引いて歩き続ける男の目の前に、急斜面が現れる。
迂回したら遠すぎる。ここはこのまま行くしかない。どうするマッツ。
いや無理。ロープで引き上げるのは無理無理。せめて下から押し上げた方がいいのでは？
と思った瞬間、落ちた。
キレイに急斜面をすべり落ちる女。
懲りずに再チャレンジ。そして再び落ちる女。これはヤバイことになったのではとハラハラするも
…何事もないんかーい！
いやだいぶ高いところから無防備に3回落ちたし、岩に直撃してたよ。。
まぁでも、とりあえず無事で良かった。
何事もなかったように楽な道を選ぶ男。そしていい感じに風雪を避けられる洞窟を見つけ夜を明かそうとしていると、何かが近づいてくる音が。走る緊張感。声を殺し気配を消してやり過ごそうとした瞬間
……ゴホッゴホッ
おいーーーー！！ 今？ え？え？今ですか？
ほぼ意識なくて、一言も発していなかった女がこのタイミングでまさかの咳。
もちろんバレましたよ。ええ。シロクマが襲ってきます。中に入ってこられたら大変となんとか発煙筒で退けるも、大事な発煙筒を失い、打ちひしがれる男。いやなんでよりによって今咳するんだよの想いもあったでしょうよ。。頑張れマッツ。
男の決断
過酷な環境が続き、だんだんと男の身にもガタが出始めボロボロになってきた時、とうとう女は水も飲まず握りかえすこともなく、口からは血が滲み、精気を失いほぼ無反応に。。
ここで男は女を置いていくことを決断します。
仕方ない。これは仕方ない。とうの昔に心身ともに限界を迎えていたであろう状況。むしろ今までよくやったよ。足早に去ろうとする男の姿は、罪悪感を振り払おうとしているかのようで切なさがこみ上げます。。
そんな思いを戒めるかのように、なんとクレバスに落下してしまいます。
足がはさまり抜けなくなる男。
必死にもがく男の脳裏には、これは罰ではないかという思いがよぎったのではないでしょうか。
そして独りで死にたくない、独りで死なせてはいけないと。
力を振り絞り、激痛に耐えながらなんとか抜け出した男は、痛む足を引きずり女のところに戻ります。
やっと辿り着いたその時響く「ハロー」の言葉。
良かった生きてた。泣きながら謝る男。
「独りじゃない」「必ず助かる」これはきっと自分が言って欲しかった言葉、自分に言い聞かせている言葉だと思う。罪悪感と安堵が入り混じった感情が溢れ出たかのような男の涙は、苦しさの中に希望の光が見えるかのようでした。
しかし、すぐにまた女は意識不明に。。このめっちゃ空気読んでる感。。笑
再び心に活力を見出した男。最初に見た女のお腹の傷より、もっとヒドそうな傷を負った足を引きずり、再び女を乗せたソリを引きながら、ひたすら進む男。雪で冷やすだけの傷。。もう無理しないで。。
小高い丘を登り、辺りを見渡すと、その時、遠くにヘリが！
発煙筒をかざし（あ、まだ残ってた）、上着を脱ぎ捨て燃やしてアピールするも、気づかず飛び去っていくヘリ。もうこれ以上頑張る気力も体力もなくし、全てを諦め女とともに眠りにつこうとする男。
…の後ろに着陸するヘリ。
おいー！
いや、気づいてたんなら、なんか合図とか真っ直ぐ向かうとかしてあげて！！
なにカッコイイ感じでフレームインしてきてたのよ。どんだけマッツを苦しめるのよ！
と最後の最後に盛大なツッコミをして鑑賞完了です。
まとめ
最小限に抑えたセリフ、マッツの表情、映像で伝える自然の過酷さ、そして、温かい食べ物や人のぬくもり、「ハロー」と交わす言葉の暖かさ、それらがとても丁寧に描き出された作品でした。
女のために危険な旅への一歩を踏み出す。
でも、女を置いていく決断もする。
誰かがいること、それは重荷にもなり救いにもなる。
決断することは、責任を負うこと。究極の限界を迎えた時、強くありたいと思うけど、このマッツみたいにはなれないのだろうな。
マッツ圧巻の演技。男の決断に込められた想いも苦悩も、全部いっぱい伝わった。
ただ、どうにも女がほぼずっと意識を失っているという状況、え？今！？という絶妙なタイミングのみ意識を取り戻し男を翻弄してる感につっこまずにいられませんでした。笑
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